さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「あ、そうだ。進藤先生も諒くんを学生時代からご存知なんですよね?」
水野さんが邪気のない澄んだ瞳で尋ねてくる。
「まあね。茂樹と田中くんと松波くんが主宰していたテニスサークルに入っていたからね」
—— 松波くん、こんなにレアな田中くんを見られなくて、ほんとお生憎さまだったわねぇ。
茂樹のもう一人の親友である彼は、お祖母さんの国の医療制度を学びたいと言って、現在イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンに留学中なのだ。
その松波くんの元カノだった久城 礼子もサークル仲間であったのだが、お互い仕事が忙しくて最近疎遠になっている。
彼女は、世が世なら華族のお姫さまだ。
——元気にしてるかな?
「今度、学生時代の諒くんのお話を聞かせてください!」
「ええ、もちろ……」
そう言いかけて、水野さんの背後を見ると、ヤンデレ大魔王・田中が、
「進藤、わかってんな⁉︎ ななみんに、余計なこと言うんじゃねえぞ」
とばかりに、ものすごい形相で睨みつけていた。
——ひいいいぃっ!
「茂樹っ、ほらしっかり立って!帰るわよっ!」
翔くんからアメックスを受け取ったわたしは、茂樹を引きずるようにして、速攻で店を出る羽目となった。