さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「あ、向井さん、入ってきて」
わたしは彼女をブースの中へ迎い入れた。
「千葉先生、この子がわたしのアシストをしてくれているパラリーガルの向井さんよ」
早速、彼女を紹介する。
「初めまして、向井 真未と申します」
彼女が名乗って頭を下げる。
「向井さん、新しく赴任した千葉先生よ。
日本の弁護士資格はお持ちじゃないけど、アメリカのニューヨーク州の弁護士資格はお持ちなの」
彼女が千葉先生を見た。
「初めまして、千葉 佑亮です」
彼もにっこりと微笑んで自己紹介する。
「千葉先生はね、NYの有名なビジネス専門の法律事務所にいらしたんだけど、うちの父が日本の企業のために尽力してほしいって必死で口説いて、ようやく我が事務所に来てもらうことになったのよ」
さぁ、ここからが本題だ。
「それでね、悪いんだけど、向井さんにはしばらく千葉先生のアシストをお願いしたいのよ。
やっぱり、向井さんのような中堅じゃないとね」
——ごめん、向井。「異動」を言ってなくて……
なんとか「回避」できないかと、ギリギリまで藻搔いていたのだ。