さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「この度、我が社でシステム統括本部を創設することになり、法的な面での監修をぜひ進藤先生にお願いしたいと思っています。
もちろん、その分の報酬については新たに契約させていただきます」
富多副社長は、単刀直入に切り出した。
「システム統括本部、ということは……」
わたしはごくり、と唾を飲んだ。
「そこでわたしに求められるのは、社内外の情報システムの開発やその運用に関わる法令遵守の監修ということですよね?」
——おいおい、ちょっと待って。
それって、完全にIT関連の案件じゃないの。
まだろくに体系化されていない新しい分野で、日進月歩どころか「秒進分歩」の世界じゃん。
しかも、うちの法律事務所が企業法務で成り立っている都合上、がんばって商取引に関する契約案件も引き受けてはいるが、わたしはもともと労務関連が専門なのだ。
——ITなんて……畑違いもいいとこだわ……
「そのとおりです」
副社長がにっこりと笑った。
「先程拝見した進藤先生の手腕からも、我が社は安心してこの新プロジェクトの監修をお任せできると思っております」
パリコレモデル級の超絶イケメンの笑顔なんて、眼福以外の何物でもないはずなのに、なぜかゾゾゾッと寒気が走った。
——絶対に、承諾するまで逃さないぞ、というヤバい笑みだ、これ。