さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
わたしは、菅野先生にTOMITAホールディングスから打診された内容を話した。
すると、白いワイドスプレッドカラーにきっちりと締めたウィンザーノットのタイを、くいくいっと緩めながら、菅野先生が苦笑する。
「……おれにこれ以上、仕事させる気?」
彼は「和風イケメン」と称される茂樹とは系統の異なる、割とはっきりした顔立ちのイケメンだ。
と言っても、スウェーデンの血が入っている富田副社長のような、ガチの彫りの深さではないけれども。
今のようにソファに座っていると、彼に威圧感はない。
でも、立ち上がると一八〇センチにもなる長身には、一五八センチのわたしは思わず圧倒されそうになる。
(それは、同じくらいの身長である茂樹に対しても言えることだけどね)
「やっぱり……ダメですか……」
わたしは一気に脱力する。
「ITシステム関連の法務なんて、ほとんどイチから勉強しなきゃいけないのに……
菅野先生が斎藤を『供出』するのを拒んだから、今日から来られた千葉先生が慣れるまで、向井を『貸出』する羽目になっちゃったのに……」
自分でも、だんだんと虚ろな目になっていくのがわかる。
「マジでわたし、過労死するかも……」