さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

「……いいですよ」

なぜか、ふわりと口からその言葉が出ていた。

「わたし、菅野先生の『偽彼女』になります」


「へ……っ?」

菅野先生が、まるで魂がごっそり抜けたかのような、世にもマヌケな顔になった。

——へぇ、菅野先生でもこんな「変顔」するんだ。


いつも飄々としていて何事にも動じない彼のこんな間抜け(ヅラ)は、たぶん相当なレア物なんだろう。

だけど、彼に憧れる法務事務職員(パラ)の女の子たちだったら、きっと真っ赤になっちゃって頭の中お花畑満開に……

——いや、さすがにこの顔ではないだろうな。

< 72 / 188 >

この作品をシェア

pagetop