さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……いいですよ」
なぜか、ふわりと口からその言葉が出ていた。
「わたし、菅野先生の『偽彼女』になります」
「へ……っ?」
菅野先生が、まるで魂がごっそり抜けたかのような、世にもマヌケな顔になった。
——へぇ、菅野先生でもこんな「変顔」するんだ。
いつも飄々としていて何事にも動じない彼のこんな間抜け面は、たぶん相当なレア物なんだろう。
だけど、彼に憧れる法務事務職員の女の子たちだったら、きっと真っ赤になっちゃって頭の中お花畑満開に……
——いや、さすがにこの顔ではないだろうな。