呪われた旅館

この旅館の客室にはそれぞれ、木や花の名前が付けられている。
私の部屋は椿。隣の弟組の部屋は桜。
その隣でみんなのたまり場になっている兄組の部屋は藤。
そして4階の最奥、私の部屋の隣には“桑”という札がかかっている。

どうやら4階の部屋には春の植物の名前が付けられているらしい。
旅館らしさがあっていいな。
そんなことを考えながら、自室の戸を開ける。

この時はまだ、これからどんなことが起こるかなんて想像もしていなかった。



私の心配は取り越し苦労だったようで、これといった忘れ物はなかった。
一通り荷物の整理も終えると暇になってしまって、なんとなくぐるりと部屋を見回す。
ベランダがあることと、床の間に掛け軸じゃなくて鏡が置かれている以外はいたって普通の和室だ。
それにしても。
1人でいるせいか、部屋が寒く感じる。
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