他校生
昼休み、知らない女の子に囲まれた。



「ごめん、聞きたいことがあって」
一人の子がそう言って、回りを見回す。

私達は、もう少し人気のない所へと移動した。



「今西さんて、渕上くんと、付き合ってるの?」

「付き合ってません」
なぜか、敬語。


「そうなんだ。仲いいからさぁ」


つまり、この中の誰かがふっちーを好きなのだろう。


「同中だし、席も隣だからです」


「渕上くんの事、好きだったり…」


……まぁ想定内の質問だけど、ちょっと待って。
これは……何かおかしくない?

これまで敬語で返していたけれど…つい、言い返してしまった。


「あのさぁ、団体で囲まれると話づらい。それに、私に聞く前に、そっちから言うべきじゃない?何組の誰かも分からないのに」

なるべく穏やかに話したつもりだ。

その今まで喋っていた女子が明らかにムッとし顔になった。


だけど、間違っていないと思う。


すると、大人しそうな女子が控えめに出て来て

「ご、ごめんなさい、今西さん。そうだよね、あの……」
その子は俯いて、もう一度私を見て、また俯く。


意を決したように

「私、渕上くんの事が好きで…その…告白をしたんだけど…“好きな人がいる”って言われて…」

その女子の目にみるみる涙が溜まる。


「大丈夫、ちぃこ」

少し前まで喋っていた子が私を睨む。


…え、私のせいですか?


「私、3組の山本千春です。諦め切れなくて、ごめんなさい」
鼻をぐずぐずしながら、その子はそう言った。


「うん、分かった。だけど、私はふっちーの事すきじゃないし、そんな事言われても困る」


“好きじゃない”
そう言った事に、その“ちぃこ”と呼ばれた子がパッと顔を上げると…

「本当!?じゃあ…協力してくれない!?」

大人しそうな顔をして……
巻き込むのがお上手だ。



「ごめん、私のまわりにもふっちーの事を好きだって子がいて、協力は出来ない。……だけど、頑張ってね」

そう言って、その軍団を残して、自分のクラスへと戻った。



……ああやって、ライバルを減らして行くのかな…

先に“渕上くんが好き”って言ったら…他の子は引くしかない。


……はぁー……

何だろう、モヤモヤする。



席に座ると

「大丈夫?」

さっちゃんにそう言われ


「後で聞いて」

とだけ伝えた。


横を見ると、ふっちーが呑気にパンを食べ終えて

お弁当の包みを開けていた。


「何、欲しいの?」


小さな梅干しを箸で摘まんでそう言った。
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