他校生

放課後、紗香とさっちゃんと、待ち合わせして

二人とは別れた。


憧れの、チェックのプリーツ。

可愛い…

一人だと言うのに顔が緩んだ。



まだ5月だし、顔を覚えていない子がいても不思議じゃないんだけど…

K校の制服とすれ違う時は、思わず顔を隠した。


窓ガラスに、うつる姿…

似合ってるかな?


ちょっと可愛く見えなくも…ない。

ボウタイをちょっと撫でて…整えた。




立ち寄った本屋さんでバスケのルールブックなど見てみる。

……絶対に紗香に付き合わされるだろうと。

どうせなら、しっかり楽しみたい。

私はスポーツ観戦が好きだった。




そとの駐輪スペースに小さな子供を乗せた自転車。
ロック解除に母親がその場から離れた。

…危なくない?あれ…

そこから目が離せなくなった。


案の定、男の子は立ち上がり
その振動で自転車は……


危ない!


母親も、気づいて駆け寄ったが間に合わず

思わず目を瞑った。
何も音がしない。


……そっと目を開ける

自転車は斜めになったものの、誰かの手によって寸での所で止められていた。



「すいません!ありがとうございます!」

「…いえ」

「あ、手、血が、絆創膏…」

「大丈夫です。手を離すと危ないですから、びっくりしたな」


男の子に、そう言うと
何度も頭を下げて親子は去っていった。


それから、その人は、その血が出たのだろう場所に目を移した。


「地味に痛い」

ボソッとそう言ったのに吹き出した。

親子の前では強がったのか……


「私、バンソーコ持ってるよ」

無意識にそう言ってしまって


彼が振り向いて気づく。


同じ年くらいの……
今、私が着ているのと同じ制服の男の子…


…しまった…


その子は私の姿を上から下まで確認して
“同じ高校”だと認識したらしく

「ああ、でも手の甲だし、ゲンコツのとこ。汗かいてるし、くっつかないじゃねぇ?」

普通にそう返してくれた。


「ハンカチで拭いたらどうかな」

「持ってねぇわ、そんなもん」

「あ、じゃあ…」

そう言ってハンカチを出した。


それから、スマホケースから絆創膏を取り出して彼の手の血の滲んだ所に貼った。

「すぐ取れるかなぁ?」

「すぐに治る、サンキュー。ハンカチ洗って返す」

「え!いいよ!」

「汗拭いたやつ、恥ずかしいだろ」

「いや、私も既に拭いたの!」

それに…祖母の…なんていうか…

可愛くない奴だ。
こんな日に限って。




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