この男、危険人物につき取扱注意!
(キッチンに行ってコーヒーでも貰おう!)
春樹の元を離れた千夏は、水音の聞こえる方へと進み古い暖簾が掛かってるのを見つけた。その奥を覗くと、そこはキッチンと言うより、いわゆる台所と呼ぶ所だった。
油で汚れたプロペラ丸出しの換気扇や、流しの上に取り付けられた古い湯沸かし器、千夏はタイムスリップしたかの様に一瞬我を忘れていた。
(ぅあ〜レトロ感ハンパない。
懐かしさを感じるなぁ…
あんまり覚えてないけど、お兄ちゃん達が施設の台所がこんな感じだったって、前にテレビ観て話してた事があったけ…)
初めての他人の家の台所に、千夏は少し躊躇しながらも一歩足を踏み入れ、一人洗い物をする坂下に声を掛けた。
「ぁびっくり!
坂下さんでも洗い物するんですね?
てっきり、下の人達がやるもんだと思ってました」
「ッ⁉︎ 貴方でしたか…驚かさないで下さい」
突然、後ろから声を掛けられた坂下は驚き、洗っていた皿を落としそうになった。
「ええ。本来はそうです。
ですが、今日は皆んなを外へ追い出してしまいましたから、私がやるしかありません」
(あーさっき…私の為か…)
「じゃ、手伝います!」
「結構です!」
「そんな事言わないで、私にも手伝わせて下さいよ?」
「そんな事より、食事まだなんですよね?
それ早く食べてしまって下さい。
片付きませんから」
坂下がそれと言った先には、小さなテーブルが有り、その上には新たに焼いたと思われる焼き魚と野菜のお浸し、湯気の上がるご飯とお味噌汁があった。
そして、それらと一緒に千夏の大好きなホットコーヒーとクロワッサン2つまでが置かれていた。
(なんで和食と洋食?)
「ありがとうございます!
これぞ日本人の朝食!って食事の横に、コーヒーとクロワッサンとは…なんか笑えちゃいますがね?
だって、この量にクロワッサンでしょ?
私、そんなに大食いに見えるのかなって…」
「コーヒーが好きなあなたなら、パンの方が良いかと思って、たまたま合ったパンを出しただけです。特に理由はありませんから、無理に食べて頂かなくて結構です」と言って坂下は食事を下げ様とした。
(態々…私の為に…?)
「食べます食べます!全て食べます!
食べたら手伝いますからね?」
食事を下げようとする坂下の手を慌てて止めると、「もう坂下さんの意地悪!」と言って千夏は笑った。