この男、危険人物につき取扱注意!

坂下はそんな千夏を見て「たしかに面白い人だ」と言って微笑んだ。

(…?)

「もしかして、坂下さんって私の事好きだったりします?」

「な、なにを突然⁉︎」

千夏の突拍子もない発言に、坂下は目を大きく見開いていた。

「だって、姑の様に口煩く厳しいと思ったら、優しく気遣ってくれたりするじゃないですか?
それって、私の事が好きだから気に掛けてくれてるって事ですよね?」

「・・・・・」

千夏の突拍子もない言葉に、坂下は言葉を失い唖然としていた。

「あれ?…坂下さん?」

「さっきも話した通り、私は若一筋です。
女にうつつを抜かしたりしません!
バカな誤解はやめて下さい!」

「そんなにムキにならなくても…
私…振られた気分です」(冗談で言ったのに…)


「そんな事より、さっき組長と何があったんですか?」

「それが…よく分からなくて…
組長さん突然怒り出しちゃって…」

「あなたがまた何かしたのでは?」

「いえ、なにもしてませんよ?
お互い顔見て食べた方が美味しいと思って、お膳を組長の向かいに動かしただけです」

「…なんてバカな事を…」

「え?
ナニかいけませんでした?
何がいけなかったか、坂下さん教えて下さい!」

「あなたが組長の前に座ったと言う事は、仏壇に尻を向けた事になります。
組長は、亡くなられた若のお母様を、今も愛しておられます。
そして、いつも御仏前の写真と会話しながら食事をされてるんです」

(そんな事…知らなかった…
…チーフのお母様が亡くなってたなんて…
そう言われれば姿は…
あーバカだ私、気づくべきだったのに…
なんで写真に気づかなかったんだろ…)

「…私、なんて失礼な事したんでしょ?
どうしたら許して貰えるでしょ?」

(まだ、サインして貰って無いのに…このまま…許して貰えなかったら…)

春樹と千夏の結婚は、婚姻届の証人欄に組長のサインがあってこそ成立するものになっていた。
その為、今はまだ婚姻は成立しておらず、春樹が組を継ぐ事はまだ出来ないのである。

「そんな事、私に聞かないで自分で考えて下さい!
あなたのミスなんですから!
どちらにしても、誠意を持って謝罪するしか有りませんね!」

(でも…会って貰えるかな?)

「…これは独り言ですが…
奥様は、とても花が好きな方で、御仏前にも良く庭の花を供えられたりしてましたね」

(坂下さん…)

「坂下さん有難う!
やっぱり、私の事大好きなんですね?
私も大好きですよ!
ハグしたいけど、急ぎますから!」と言って、残っていた食事をたいらげると、急いで台所を離れていった。

「あ、おい!
洗い物、手伝うんじゃなかったのかよ⁉︎」

坂下の言葉は届かず、結局千夏の食器も坂下が洗う事となった。





< 109 / 190 >

この作品をシェア

pagetop