この男、危険人物につき取扱注意!
台所を飛び出した千夏は、その足で庭へと急ぎ花を探した。
しかし、庭には花が咲いているどころか雑草が生い茂っており、花壇らしき跡も見つからなかった。
「花壇ってどこ?えっこれ…?」
雑草をかき分け小さな花壇らしき形跡を見つけた。
だが、そこも他と同様で一輪の花も咲いておらず、とても仏壇に供えられる状態では無く、あまりにも酷い有様に千夏は言葉を失った。
(酷い…酷すぎる…ずっと手入れしてくれなかったの…誰も…
家の中はちゃんと掃除も行き届いてるのに…)
「クヨクヨしてても仕方ない!
咲いてないなら、咲かせてみせ様!
よし、先ずは草むしりから!」
無いのなら作ればいいと草むしりを始めた千夏だった。
(しかし、土は硬いし雑草の根は強い…
こりゃー腰に来るわ…
それにしても…今日も暑いなぁ…)
炎天下の作業にも関わらず、なんの熱中症対策もとらないまま勢いで草むしりを始めた千夏だったが、気が付けば花壇以外の場所も草むしりをしていた。
(こうなったら、庭中の雑草抜いてやろうじゃない!
…それにしてもどんだけ広いのよ…
全然ゴールが見えない…暑い…フー…ハァハァ)
「千夏?」
(え?…誰か呼んだ…?)
呼ばれた気がして振り返り見上げれば、ギラギラと太陽が千夏を照らしていた。立ち上がろうとしたその瞬間、目の前は真っ暗になってしまい千夏はそのまま意識を失った。
「…夏、千夏…」
(…ん…誰れ?)
呼声に重いまぶたをゆっくり開けると、そこには心配そうな春樹の顔があった。
(チーフ…?)
「うさぎ、気が付いたか?」
(ここは…?)
「チーフ…私…どうして?」
千夏の言葉にただ「軽い日射病らしい…」と言った春樹の顔は曇っていた。
(そっか…日射病か…私倒れたんだ…あっ花壇!)
花壇の事を思い出した千夏は、まだ辛い体で起き上がろうとするが、春樹に体をおさえられてしまった。
「点滴が終わるまでは、そのまま寝てた方が良い」
春樹にそう言われ、初めて自分が点滴に繋がれている事に気がついたのだ。
(…点滴?往診してもらったの?…申し訳ない…
私ぜんぜんダメだなぁ…チーフの役にたつどころか足引っ張ってるよね…あんな顔までさせて…)
頭痛が酷く、自分でも無理だと思った千春は、春樹の言葉に甘えさせて貰う事にした。
「すいません…私が余計な事を言ったばかりに…」
声のする方へ顔を向けると、春樹の後ろに控えていた坂下が、申し訳ないと頭を下げていた。
「坂下さん…頭上げて下さい。
私が悪いんです。なんの対策もしないで外に居た私の自己管理不足です」
(40度を超える日が続いてるんだもん、いくら午前中とはいえ対策とるべきだったのよ)
何度と額のタオルを冷たいモノと替えてくれる春樹に、申し訳無く思い千夏は何度も“大丈夫”だと言うが、春樹は眉を顰めて“黙って寝てろ”と言って千夏の側を離れなかった。
(チーフにも坂下さんにも、迷惑ばかりかけてるけど、こんな私で大丈夫なのかなぁ…)
「チーフ…こんな私で、お嫁さん役大丈夫ですか?」
「ん…?大丈夫もなにも…今更他の人に頼めないだろ?親父にも会わせてるんだから?」
「…そう…なんですけどね…」
「俺としてはうさぎに頑張って貰わないと、困るんだが?」
(…そう…ですよね…)
そのまま千夏は、深い眠りに入っていった。