この男、危険人物につき取扱注意!
自分達が飲んだコーヒー豆は、千夏の為にと坂下が態々現地まで行って取り寄せている物。
それを下っ端の二人が飲んで良いわけがない事は、達也や真司もよく分かっていた。
だが、組の若頭の嫁である千夏に頭を下げさせたとあっては、組の面目にもかかわる事になりかねないと二人は慌てた。
「姐さん止めてください!」と焦る達也と共に真司も「そうです!俺達なんかに頭下げないで下さい!」
「でも…」
「それから、俺達に敬語もやめて下さい。
名前も呼びすてで大丈夫ですから!」
「え?でも…お二人は先輩ですし?」
「坂下の兄貴は兎も角、俺達下っ端に敬語や頭を下げるなんて事は、絶対しないでください。
あなたは若頭の嫁さんで…俺達の姐さんなんですから!」
「そうですよ、千夏姐さん!」
(俺達の…? 千夏姐さん?)
数時間前までは疎外感さえ感じていた千夏だったが、二人の言葉に嬉しくなり目頭が熱くなっていた。
末っ子で溺愛する兄達に甘やかされて育った千夏が初めて呼ばれた“千夏姐さん”。
意味合いは普通とは違うが、それでも千夏は嬉しかった。
(嬉しいけど…やっぱり変…)
「じゃ、敬語使わない代わりに、私の事は姐さんじゃ無くて名前で呼んでくれる?」
「え⁉︎…それは無理な話です。だって姐さんは姐さんですから」
「姐さんって呼んでくれるのは嬉しいんだけど…
私、もっと皆さんと仲良くなりたいの!
だから、今は姐さんってよばれると一線引かれてる様で…ちょっと寂しいし…
今朝はあんな啖呵切っといてなんだけど…
私が極道生活に慣れるまで、名前で呼んでくれないかな?
若頭や坂下さんには、私から話して置くからお願いします!」
「分かりました!他の兄貴達にも俺達から話ときます!」
「有難う」
(良かった…これで少しは気持ちが楽になる)