この男、危険人物につき取扱注意!
千夏が子供達を見ていると、小さな女の子が寄ってきた。
「だーれ?」
(あっどうしよう…えっと…)
「どちら様ですか?」
不審に思われたのか、若い先生が駆け寄り女の子を抱き抱え、その子を守る様に背を向けた。
「あっ…私、小さい頃この園にお世話になっていた者です。
あの…園長先生にお会いしたくて…」
「あーご連絡頂いた小野田さん?」
「はい。小野田千夏です」
「園長先生、あなたが来るの楽しみに待ってましたよ?
園長室は、変わらずこの廊下を真っ直ぐ行った突き当たりですから」
変わらずと言われても、千夏の中では初めて訪れる場所で不安でいっぱいだった。
「…はい」
ひとり園長室へ向かう千夏の後を興味津々について来る子供達。
“おねぇちゃん遊びに来てくれたの?”
“一緒に遊ぼう?”と千夏の来園を喜ぶ声が沢山聞こえて来た。
そして、千夏は園長室の前まで来ると、大きく深呼吸をし、ドアをノックした。
「はい、どうぞ」
返事を聞きドアを開けると、そこには見知らぬ年配の女性が居た。
(この人が園長先生…?)
「ちーちゃん?まぁ大きくなって…」
園長先生は千夏へ駆け寄り、嬉しいそうに千夏の肩を撫で手を握った。
「こんなに綺麗な娘さんになって…」
「…有難うございます。私…ここでの生活の記憶が無くて…園長先生の事も覚えて無くて…すいません」
幼い頃に小野田夫妻に引き取られた千夏には、施設で生活した記憶が全く無かった。
小学三年生の時、同級生の心ない言葉を聞くまでは、ずっと、小野田夫妻を実の親だと思い兄達を実の兄だと信じていた。
千夏が幼かったからと言うのもあるが、何より小野田夫妻が実の子供として沢山の愛情を注いでくれたからである。