この男、危険人物につき取扱注意!
退勤時間が近づいた頃、やっと春樹が姿を現した。
「チーフ、この忙しい中何処行ってたんですか⁉︎」
そう言ったのは伊藤美咲だった。
「悪い…ちょっと副社長に呼ばれててな」
(副社長に呼ばれてって、何話してたんだろ?)
「副社長も人手が少ないって知ってるのに、もう!」
「伊藤、そう怒るな?
その件については後で話す。
ちょっと、皆んな手を休めて俺の話聞いてくれ!
最近、シフトの変更の申し出る者が多い様だが、
その辺の事も踏まえて、少し早いが査定の面談をする事になった」
(査定の面談…?
少しどころか随分早いんじゃ…)
「菅原、受験生の子供がいると大変か?」
「えっええ…まあ…」
「夜勤シフトに入れないでくれって小野田に頼んでるらしいな?」
(えー今ここでそれを言っちゃうの?)
「あ…いえ、子供の受験が終わるまで…少し減らして貰えたらと思いまして…」
「いいぞ」
「本当ですか?」
断れ続けたシフトの件が、やっと受け入れられたと菅原は大喜びした。
(え⁉︎何言ってんの!
そのアナどうするのよ⁉︎
シフト組むの私なんですからね!
もしかして、私がイヤリング受け取らなかったから、嫌がらせしてんるんじゃないでしょうね?)
「下の娘さんが来年高校受験って事は…まだ何年か続くよな?」
「いえ、長男の受験が終われば、なにも問題ありませんので」
「じゃ、その間はパートとして働いて貰うか?」
「え⁉︎そんな…」
(へーそうきましたか?
結構怒ってたから、クビって言い出すかと思った)
「仕方無いだろ?」
「じゃ、受験が終わったら、元にもどしてもらえますか…?」
菅原は自分要望が叶う様に春樹を見つめた。
だが、それは叶わなかった。
「そんなに長い間、チームリーダーのポスト開けておくわけにもいかないし、他の者達に負担が掛かるのも困る。
だから、人事部に人員の補充を頼んで来た」
「困ります!
チーフ!リーダー下さないで下さい!お願いします…」
「巫山戯た事言ってんじゃねぇぞ⁉︎」
(ちょっちょっとチーフ!
落ち着いて!ヤクザの方の顔が…)
「何度、お前とこの話した⁉︎
事情があるのはお前だけじゃ無いんだぞ⁉︎
チームリーダーのお前が夜勤嫌がったら、誰がやるだ⁉︎
ましてや、最近は週末の休みも多くなってるじゃないか⁉︎」
「…それは」
「子供を思うお前の気持ちが分からない訳じゃない。だが、この際よく考えるんだな?
この先どうしたいのか」
「はい…」
ずっと春樹と菅原の話を静観していた皆んなは、菅原の返事を聞いて何とか無事に終わったと胸を撫で下ろした。