この男、危険人物につき取扱注意!

秦の運転する車は急発進し、心配する嶋田達をその場に置いて、闇の中へと消えて行った。

「秦さん、どうしてあんな所に?」

再び尋ねる千夏へ苛立ちながらも答えてくれた。

「迎えに来てやったんだろが!
ガキがハシゴなんて10年早いわ!」

(またガキって…誰も迎えなんて頼んで無いし!
え…なんでハシゴって…)

「…もしかして…
カラオケの前…居酒屋の店の前でも声掛けました?」

「何度も呼んでるのに無視しやがって!
若の頼みじゃなかったら、お前なんか放っとくんだけどな‼︎」

(だって…酔っ払いだと思ったんだもん…
だったら、名前くらい呼んでくれれば!)

「…ところで、何処に向かってるんですか?」

「腹黒蛇組に決まってるだろ!馬鹿かお前は⁉︎」

「さっきからお前お前って、私にはちゃんと名前があるんですからね‼︎」

頬を膨らませて怒る千夏を見て、秦は“プッ”と吹き出した。

(あ、いま笑った?
この人でも笑うんだ?)

「私の名前は、お前ではなく小野田千夏です!」

千夏は、秦が自分の名前を知らないから、お前と呼ぶのだと思いフルネームで名乗ったが、すぐ様秦によって否定された。

「はぁ⁉︎
お前、小野田じゃねぇーだろ?
若と結婚したなら、お前はもう腹黒蛇千夏だろ⁉︎」

(…そうだった…
私…結婚したんだった…
腹黒蛇…千夏…)
「…はぁ…」

秦の言ってる事は間違い無いと、ただただ千夏は溜息をつくばかりだった。

(でも、ヤクザの若頭と結婚だよ?
そりゃー、一度は覚悟決めて婚姻届にもサインしたし、ハンも押した。
でも、騙し討ちされたと知ったら、怒ると思わない?
…でも…こんな事秦さんに言えやしないし…
だから、今は腹黒蛇組には帰れないし、チーフに会いたく無い。
このまま帰ったら…私、なに言い出すか分かんない。
結婚の真相を皆んなが知ったら…
組長さんがもし知ったら…)

思いつめた顔している千夏に、秦は“何か問題でもあるのか?”と聞いた。

「秦さん…私、帰りたくない…」

「はぁ⁉︎なんだと‼︎」

「今は…帰れない…
明日は、母の検診に付き添う事になってるから…
でも、実家にも帰れないし…
何処かビジネスホテルに…」

「っ馬鹿野郎!それならそうと早く言え‼︎」

「キャー!」

秦は急ブレーキを踏むと思いっきりハンドルをきりUターンした。

「お前がもし、帰りたくないって言ったら、マンションへ送ってやってくれて…若から言われてた。
だが、いくらお前が帰りたくないって言っても、俺は必ず連れて帰るつもりだった!」

秦は強い口調でそう言うと、千夏へカードキーを渡し更に話を続けた。

「だってそうだろ⁉︎
お前だって覚悟しての事だろ?
若と結婚するって事は極道の嫁になる事だって!
だから、絶対連れ帰るつもりだったけど、そう言う事情なら仕方ない。
若のマンションへ送る!」






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