この男、危険人物につき取扱注意!
マンションの前まで送って貰った千夏は、秦から受け取ったカードキーを使って春樹の部屋に入り、部屋の電気を点けた。
すると直ぐに秦から渡された携帯電話が着信音を鳴らした。
他人の携帯電話で登録のない番号に出る事を躊躇っていた千夏だが、あまりにもひつこく鳴り続ける携帯電話に、恐る恐る千夏は通話を押した。
「…もしもし?」
「何も問題ないか?」
電話の相手は秦だった。
マンションの前で車から降りる際、千夏が携帯電話を持ってない事を知った秦は、ダッシュボードから携帯電話を出すと、それを千夏へ貸してくれたのだ。
「…はい…今日はありがとうございました。
あの…この携帯どうしましょう?
無いと困りますよね?」
「それ、俺のプライベート用だから構わない。
じゃ、俺帰るから!」
「はい…あっ秦さん!」
「あ゛なんだ?」
「…………」
何も言わない千夏を察してか、秦はそのまま黙って千夏が話すのを待っていてくれた。
暫く待っていた秦だが、ついに痺れを切らした秦は先に口を開いた。
「俺はお前の様な女嫌いだし、色気も何もないお前は、若には不釣り合いだと思う。
だが、若が決めた事なら俺は従うしかない。
…お前がナニ悩んでるか知らないが、極道の嫁になるって腹括って来てんだろ⁉︎
若とナニがあったにしても、お前が帰る場所は腹黒蛇組しかないんだ。
だから、明日は必ず帰れ!
絶対に、若を困らせる事だけはするなよ?」
「………」
「じゃ、しょんべんしてから寝ろよ!」
秦はそれだけ言うと、電話を切ってしまった。
(困らせるなって…私が困ってるんだけど?)
連日の仕事の疲れもあり、早く風呂に入って寝ようと千夏はバスタブへ湯を張った。
そして、湯に浸かり肩をほぐしながら、千夏は浴室の天井を見上げた。
(昨日、初めてここへ来た時は緊張しながらもシャワー借りたっけ…
まさか今日も来る事になるとは…)
「あー幸せ!
こんなにのんびり湯船に浸かれるなんて…何日ぶりだろ…
他人のうちで勝手にお風呂に入って、私って結構図々しい女だったんだなぁ?
あー気持ちい〜!
ずっとシャワーだったからなぁ…
やっぱり日本人は湯船に浸からないとダメだわ!
会社にもバスタブ置けばいいのに…って無理か!」
千夏は風呂から出ると真新しいTシャツを着て、髪をタオルで拭きながらキッチンへと向かった。
そして、“失礼します”と言って冷蔵庫を開けた。
「…やはり昨日とお変わりない様で…
誠に勝手ながら、一本頂戴いたしまする!
…エヘヘ」
冷蔵庫の中は昨日春樹が言っていた様に、ペットボトルの水と缶ビールだけしかなかった。
「あれ、普通のビールも有るじゃん!
仕事中だったからノンアルだしてくれたのかな?」
千夏はその中の水を一本貰う事にした。