この男、危険人物につき取扱注意!
実家へ母を迎えに行くつもりだった千夏だが、駅で時間の確認をしようと鞄から携帯電話を取り出すと、母からの沢山の着信履歴に驚き、直ぐに電話を掛けた。
すると、梨華は既に向かってるからと、二人は病院でおち会う事になった。
「ごめんね…ちゃんと家の近くまで迎えに行くつもりだったんだけど…」
「いいのよ、お母さんだってひとりで行けない訳じゃ無いんだから!」
「でも…」
「パパ達には黙ってれば良いのよ?
こうして無事に会えたんだし何も問題ないわ!
ホントうちの男達は過保護すぎるのよ!
千夏もそう思うでしょ?」
(確かに…)
千夏の父、小野田浩司は梨華と出会った頃は仕事が生き甲斐のまさしく仕事人間だった。
だが、結婚してからは何事においても梨華を優先していた。
勿論、千夏達の事も我が子の様に可愛がってくれた。
「少しくらい、ママと千夏だけの秘密が有ってもいいじゃない?」
そう言って楽しそうに笑う母に、千夏の心は癒されていく様だった。
この日は、毎回行われる血液検査と胸から腹部にかけてのCT検査が行われた。
「今日の看護師上手な人で良かったね?
いつもあの人がやってくれたらいいのにね?」
長年にわたり繰り返された点滴や採血で梨華の血管壁は脆弱になり、採血量が不足だったり内出血することがあった。その為、経験の少ない人に担当されると時間がかかっていたのだ。
だが、この日は運良くベテランの看護師に当たり、いつもよりずっと早く終わったのだ。
「そう言うこと言わないの!」
「だって…いつも何度も針刺されて嫌じゃない?
前回なんて、何度やっても駄目で結局今日の人に変わったじゃない?
だったら、初めから今日の人がやってくれたらいいのに!」
「…そうね。
ベテランの人がやった方が早いわよね?
でも、そうなるとベテランの人にだけ仕事が集中して、苦手な人が何もしなければその人はいつまでも上達しない。
ここの看護師さん達は皆んな親切な方ばかりだし、採血は実際にやらないと上手くならないと思うのよ?
頑張ってる人の為にママの腕が少しでも役にたつならママは全然平気よ?」
「……」
(確かに…私も入社したばかりの頃は使いモノにならなくて…チーフに怒られた。
でも、チーフが根気よく仕事を教えてくれたから…今の私がいるんだ…)
「さて、診察時間までは随分時間あるし、いつもの所に行こうか?」
梨華にそう言われて、千夏達二人は病院の1階にあるカフェへと向かった。
「今日はなに食べに行く?」
検診日のお昼にはいつも二人で外食する事になっていた、梨華は千夏とのこの時間をいつも楽しみにして居るのだ。
「お母さんはなにがいい?」
「今日は千夏が選ぶ番でしょ?」
「んー…じゃ、おじさんのビーフシチュー!」