この男、危険人物につき取扱注意!
チリンチリン♪
店のドアを開けるとベルの音とほぼ同時に聞こえて来る元気な声。
「いっらしゃいませ!
あっ梨華ちゃんとちーちゃんだ!」
笑顔で二人を迎えるのはこの店の主人の妻、京子だった。
二人は案内された席へと座り、千夏は京子から渡されたメニューを広げるが、既に決まっていたビーフシチューを注文する。
梨華も同じ物を注文すると、京子はそれを伝えに厨房へと向かうと、入れ替わりにこの店の店主であり、梨華の兄の幸助が二人の顔を見にやって来た。
そして“よっ元気か?”と言って梨華の額に手を当てた。
「もう、おにぃちゃん!
いい加減やめてって言ってるでしょ⁉︎」
「兄貴が妹の心配して何が悪い!」
「そんな事より私達、お腹すいてるんだから早く食べさせてよ!」
幸助は“ハイハイ”と言いながら厨房へと戻っていた。
(ホント仲が良いよなぁ…この二人)
「春樹さんとなにかあった?」
「え?」
「ママに、隠し事出来るとでも思ってるの?
千夏がおじさんのビーフシチューが食べたいって言う時は、いつも何かあった時じゃない?
それに、今は春樹さんの事で頭いっぱいでしょ?
新婚なんだから?」
「…本当におじさんのビーフシチューが食べたくなっただけ…だよ?」
母を心配させたくないと思っていた千夏だが、テーブルの上に出していた手に梨華の手が重なり、顔を上げると梨華はゆっくり頷くと優しく微笑んだ。
「…あのね…何から話せば…」
言葉を選びながら話そうとする千夏へ、梨華は“ゆっくりで良いから”と小さな子供をあやす様に重ねた千夏の手摩った。
「お母さんは…彼の事どれだけ知ってるの?」
「ん〜千夏が思ってる以上に知ってると思うよ」
(え⁉︎)
驚く千夏に、梨華は悪戯がバレた子供のように舌を出して笑った。