この男、危険人物につき取扱注意!

梨華の“思ってる以上に知ってる”その言葉に驚くのと同時に、それがどれほど迄の事なのかとかえって千夏を悩ませた。

「ほら、ママに話してみなさいよ!」

「………」

「春樹さんって男気があって礼儀も弁えてて、足も長くてホントスタイル良いわよね?
アイドルにはちょっと歳取りすぎてるけど、モデルなら絶対大人気だと思うわ!
ママ、応援しゃう!
あーママが独身だったら…千夏の代わりに絶対ママが結婚する!」

「ママ‼︎」

「だって、あんなにイケメンなんだもん!」

(もん!って…)

春樹を褒めちぎるだけでなく、愛する夫が居ながら結婚したいなどと言う母に、驚きと怒りの入り混じった複雑な感情に千夏は頭を抱えこれ以上言葉が出て来なかった。

(…お父さんが聞いたらきっと泣くよ?
私達の目の前でキスするくらいラブラブなくせに、
なにが独身だったらよ⁉︎
ホントよく言うわよ!)

「春樹さんのどこが不満なの?」

「…不満って言うか…付き合ってもないのにいきなり結婚って…おかしくない?」

「ん〜おかしい?…
おかしいかおかしくないかそれは千夏の偏見じゃないかな?
だって昔は、恋愛結婚なんて少なかったのよ。
ママのお婆ちゃんのお婆さんなんて、結婚式の当日まで会ったことも無かったんらしいの…
時代だったからと言えばそうかもしれない。
それでもお婆ちゃんのお婆さんは幸せだったから、今ママがここに居る。
どんな経過で結婚しようとも、幸せになれたらそれはそれで良いと思わない?
それとも千夏は、お婆ちゃんのお婆さん達の幸せも否定する?」

「…否定は…」

「ママ、春樹さんの人柄に惚れちゃったの!
パパだって“彼なら信用出来る”って言ってたもの!
それに、犯罪絡みとか何か脅されてサインした訳じゃ無いんでしょ?
千夏はよく考えて、自分の意思でサインしたんじゃないの?」

(自分の意思と言えばそうだけど…でも騙された感は凄くあるよ?)

「彼の真意が分からないの…」
(まともに好きだとも言われてないのに…
いきなり拉致されて婚姻届にサインだなんて…)
「…私には結婚に対する夢があるの…
お母さん達みたいに互いを尊敬しあえる人と、恋愛して…それから結婚したかったのに…
いきなり結婚って…」

「千夏は、春樹さんの事嫌い?尊敬してないの?」

「…別に嫌いじゃないし尊敬もしてるよ!
あんな凄いモノ開発しちゃう人だもん!
…でも…私プロポーズもされてないんだよ!」

「なーんだ。
千夏は、想像してた様なプロポーズしてもらえなかったから怒ってるんだ?」

「お母さんは良いわよ!
お父さんに素敵なプロポーズして貰ったんだから!」
(クリスマスにとても素敵なプロポーズしてもらったって、嬉しそうに話してたじゃない!)

プロポーズの話が出たところへ、幸助夫妻がビーフシチューを運んで来た。

「ねぇ、お兄ちゃんはお義姉さんにどんなプロポーズしたんだっけ?」

梨華からの思いがけない問いかけに、幸助は言葉を詰まらせ料理をテーブルに置くとそそくさと逃げる様に厨房へと戻って行った。






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