この男、危険人物につき取扱注意!

暫く何も話さず、コーヒーを飲んでいると、木ノ下は千夏のデスクの端に腰を下ろした。


「で、なに溜息ついてたんだ?」と木ノ下は再び千夏へ聞いた。

「…萎れちゃう前に、結婚相手を見つけないとダメだって話ですよ!」と千夏は答えた。

「なに? お前って結婚願望あったの?」と言う木ノ下の失礼な質問に、千夏は下から木ノ下を睨み上げた。

そして、
「はぁぁぁ⁉︎ 勿論ありますよ‼︎
チーフと違って、私だって結婚願望くらい人並みにはありますよ!
でも、この仕事してるうちは無理でしょうね…?
時間は不規則だし、家には帰れない事も多々ありますからね?」


仕事の忙しさは勿論あるが、それに加えて千夏には両親より小煩い兄が二人いて、その兄達を厄介に思っていた。

以前、千夏はその兄達にプロポーズされた事がある。
それ以来、兄達から結婚を口にする事は無くなったが、千夏に対する溺愛は変わっていなかった。
その為、両親より兄達を克服出来る相手を見つけないと、千夏はまず結婚出来ないのだ。


「うさぎ、この仕事辞めたいのか?」

「はぁ? 辞めたくないから、困ってるんじゃないですか!」

「じゃ、俺と結婚する?
互い仕事の事分かってるし、
仕事とどっち取るなんて事聞かなくて済むだろ?」と、周りに聞こえない様に木ノ下は小声で話した。


以前、千夏は木ノ下に愚痴を溢した事があった。

当時付き合っていた彼とのデートを、仕事の都合で何度かドタキャンしたある日、『俺と仕事、どっちが大事なんだよ⁉︎』と言われた事を木ノ下に話した事があった。
だから、その時のことを覚えていて木ノ下が冗談を言ってるのだろうと千夏は思った。

だが、あまりにも真面目な顔して言う木ノ下に驚き、千夏は言葉を失いはしたが、直ぐに我に返ると笑い出していた。


「プッ、アハハハハハ
チーフ、真面目な顔で冗談は辞めて下さいよ?
チーフと私が結婚って、無い無い! アハハハハハ」

あのチーフが冗談?
真面目で仕事一筋のチーフが冗談を言ったよ?
マジでビックリなんですけど?
いつも能面つけた顔してて、笑った顔さえ見せないのに…そのチーフが冗談??
マジ、ウケる!


最初こそ大声で笑っていた千夏だが、仕事中だと言う事を思い出し、笑いを必死に堪えながら顔を上げると、木ノ下は眉間に皺を寄せていた。


おっと、怒らせちゃったかな?
でも、チーフが悪いんだすよ?
言った事もない冗談なんて言うから!
普段冗談なんて言わないくせに!
今日はどうしちゃったんですか?
なにか、変なもの食べたの?




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