この男、危険人物につき取扱注意!
「あぁ疲れたー」
両腕を上へと伸ばし、首を回して固まっていた体をほぐす千夏。
(あー帰るの面倒だなぁ…
今から帰っても、寝る時間なんて無いし…
また会社に戻るなんて言ったら…
絶対お兄ちゃん達怒るだろうし…
下手したら家から出してもらえないかも…
だったらこのまま帰らないで、また仮眠室で寝た方がいいかな…
それにしてもお腹すいた!
後のことは腹ごしらえしてから考えよう!)
この後、千夏は18時には社に戻って来ないといけないのだ。
DOYでは、どの部署も思う様に休みは取れないが、自分と扶養者の誕生日だけは優先的に休みを取ることが出来る事になってる。
その為、今日が誕生日である千夏は本来なら休みの筈だったのだが、伊澤美咲の休日変更の希望を千夏が却下し厳しく叱責きした際、それを見ていた同僚等から『酷い』だの『パワハラ』などの言葉を浴びせられた挙句、同僚等の前で伊藤美咲は泣きだしてしまった。
その為、さらに同僚等から冷たい眼差しを千夏一人が受ける事になってしまった。
(もし、パワハラで訴えられでもしたら…
もし、それをマスコミが聞きつけブラック企業の烙印をおされたら…
自分一人の問題で済まなくなる。会社に大変な迷惑を掛けてしまう)
そう考えた千夏は、仕方なく美咲のシフト変更を受け入れたのだ。
「終わったか?」
頭の上から声がかかり見上げれば、そこには木ノ下が居た。
「あれ? チーフまだ居たんですか?」
ずっと木ノ下の姿が見えなかった為、もうとっくに帰ったとばかり千夏は思ってた。
「人の仕事、買って出る奇特な部下を置いて帰れないだろ?」
「え? もしかして、待っててくれたんですか?」
「旨い飯奢ってやるから、早く帰り支度しろ!」
(マジで? ヤッター!)
木ノ下の言葉に、美味しい飯にありつけるとばかり、千夏は喜び勇み帰り支度を始めた。
その後、一緒に部署を出て行く二人に多くの妬みの眼差しが向けられていた事に、この時の千夏は気付いていなかった。