この男、危険人物につき取扱注意!
二人は会社の近くにある店に入ると、忙しく食べるサラリーマン達と同じカウンター席に座り、待つ事なく目の前に置かれた牛丼と豚汁に、千夏は言葉が出て来なかった。
(美味しい飯奢ってやるって言うから…
それなりの物を期待したのに…
なんで牛丼?
そりゃ牛丼も美味しいけど…ちょっと違くない?)
「食わないのか?」
隣で特盛り牛丼を食べる木ノ下を横目で睨み、千夏は溜息を吐くと同時に割り箸をパッキンと割る。
「いいえ、食います‼︎」
(まぁ…この時間まだどこも混んでるし、並んでまで食べたい物があるわけでも無いし、今は空腹感を満たして少しでも早く寝たいって言うのが正直な気持ち。
そう思えば、誰の目を気にする事なく食べれる牛丼はうってつけのご馳走と言えるかもね?)
雄叫びをあげんばかりに、紅生姜をたっぷり乗せた牛丼を一気に掻き込む千夏の姿に、周りの者は驚いていたが木ノ下だけは頬を緩ませていた。
「ほんと、お前いい食べっぷりだよな?」
「有り難うございます。お腹空いてるんで!
それに牛丼なんて上品に食べるもんじゃないでしょ?
ましてや一緒にいる相手がチーフですからね?
私の女の部分見せる必要ないでしょ?」
「それは俺を異姓として意識してないって事か?」
「ですね!」
(入社前から私はこのチーフの事を知ってる。
あの時から、この人を異性としてみた事は一度もない。
多分…この人も同じだと思う。
じゃなかったら、女性を牛丼屋になんて連れて来ないでしょ?)