この男、危険人物につき取扱注意!

社を出てから5時間後、二人は少し時間を空けて別々に会社へと戻った。
それは、一緒に出る姿を見られているのに、また一緒にもどれば余計な噂を立てられかねないと、千夏が思っての事だった。


「おはようございます!」

「お疲れ様です」


千夏はどんな時間だろうと、出社すると必ず“おはようございます”と挨拶するが、同僚等からは“お疲れ様です”と返ってくる。

千夏が自分のデスクに着くと、隣の席の嶋田が「結局、休み代わったんですね?」とタイピングの手を休める事なく抑揚のない声で聞いた。


「え?…うん」

「だったら、泣かさず初めから代わってあげれば良いのに…」と嶋田は嫌味混じりに言う。

「確かにそうかもね? でも…」

「まぁ言わなきゃ分からない人もいますからね!
でも、サブだからってあなたは真面目過ぎるんですよ」

え?「嶋田君…?」

「残業はお断りですが、就業時間内なら手伝いますんで、伊藤さんと間野さんの仕事、僕に振ってもいいですよ」

(嶋田君とはずっと隣の席だったのに、挨拶以外ほとんど喋った事なかったなぁ…
結構良い人なのかも…)

「ありがとう…」


千夏は嶋田に礼を言い、パソコンの電源を入れるが、
つい30分ほど前木ノ下に言われた言葉が頭から離れず、直ぐに手が止まってしまう。

キスマークについては、木ノ下が言う様な跡はひとつもなく、揶揄われたのだと千夏は思っていた。
だが、部屋を出る際、またしても木ノ下に気になる言葉を投げかけられていた。




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