この男、危険人物につき取扱注意!

「あっ先輩やっと見つけた!
もぅ、探しましたよ!」

(先輩…え?
チーフの方が先輩なの…?
まぁ、見た目からして副社長の方が若いか…?
でも、なんで先輩って…)

「…代々木代慌ててどうした?」

「どうしたじゃないですよ!
携帯に電話しても出ないし!」


副社長の言葉に全く詫びれる様子もない木ノ下は、タバコをくわえたまま「携帯?」と言って、ライターでタバコに火をつけた。

「パッパッ…携帯電話…
あー悪い…
最近勧誘の電話が多くて、デスクの引き出しに入れたままだったわ」

「勧誘って…なんのセールスですか?
まさか…⁉︎」

「何も心配する事はない。
お前は今まで通りで居れば良い。
そんな事より、副社長のお前が社内走り回ってる方が俺は心配だけど?
社員達が不安になるだろ?」

「先輩が自分の仕事してくれたら僕が走りまわる事は無いんです!」

(そうだ!そうだ!自分の仕事しろ!
ん…?
チーフの仕事って…そんなに副社長と関係あるの?)

「課長代理まで引き受けて(やって)十分やってるだろ?」

「それは自らやってる事でしょ?
僕が言ってるのは本来の仕事です!」


(…本来の仕事…ってナニ?)


「仕事の依頼だってどれだけ来てる事か!
先輩はソフト開発部の責任者でもあるんですからね!」


(ソフト開発部の…責任者…?チーフが…?)


「ソフト開発の方は志村に任せたって言ったろ?」

「その志村から相談したいって、何度もヘルプメールが来てるんです!」

「そのくらいお前が処理しろよ」

「もぅ十分小野田さんは育ったんじゃないですか?
部を任せられるだけには」


(え…私…?私なにか関係あるの?)


副社長に『任せられる』と言われ、千夏は自分が認められている事を嬉しく思ったが、木ノ下の会社での立ち位置が分からなくなった。


「もっと先輩が社長室に居てくれたら、なにも問題無いんですけどね!
それに、先輩が社長だって知ってるの僕だけなんですから仕方ないじゃないですか!」と言って代々木代は額の汗をハンカチで拭った。


(っ⁉︎ 社長⁉︎…チーフが??
だって…会社(うちの)社長の名前って…腹黒田って…)


木ノ下が社長だと聞いた千夏は、驚きで声を上げそうになったのを慌てて掌で口を抑えた。


「…それより用件を早く言え!」

「あっすいません。先月F社に納品したシステムに不具合が出てるらしくて、ちょっと見てくれませんか?」

「不具合?そのくらい志村達に直させろよ?」

「勿論やらせましたよ!
でも、先輩の作ったのはあまりにも複雑過ぎて、あいつらには何がなんだか分からないらしくて…
先輩頼みますよ?」

(チーフが…社長で…プログラマー?
なぜ、隠してたの…)


木ノ下が社長などと考えもしなかった千夏は、驚きとこれまでの木ノ下への無礼を悔いていた。


(いつも居なくなってたのって…
仕事サボってたんじゃなくて、寧ろ仕事してたの…
社長として…プログラマーとしての仕事…)


身を隠し二人の話を聞いていた千夏だが、手に持っていたスマホが突然着信音を鳴らした。
千夏が慌てて電源を切った時には既に遅かった様で、木ノ下達に気づかれてしまった。

「うさぎ…?」
「小野田さん…」


二人は千夏を見て驚いてはいたが、それには触れず木ノ下は腕時計を見て、『30分したら部屋に行く』と言うと、代々木代は木ノ下に頭を下げその場を離れていった。




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