この男、危険人物につき取扱注意!
「あ、間違えた。偽装結婚してくれ?」
「偽装…結婚?」
「そうだ。
俺は、組を継ぎ解散させる為、うさぎは、兄貴達を欺いて恋愛する時間稼ぎをする為。
勿論、事が済んだら離婚すれば良いし、うさぎが、結婚したいと思う男が出来たら、俺の方が片付いて無くても離婚して良い。
もし、戸籍に✖️が付くのが嫌なら、後から婚姻の無効を届け出れば良い」
「え?簡単に無かった事に出来るんですか?」
「あゝ大丈夫。うちの顧問弁護士に確認済みだから心配するな!」
「…でも…やっぱり結婚は…」
未だ思い悩む千夏を、木ノ下は最後の切り札を出し説き伏せようとした。
「実は、代々木代からうさぎの処分を求められてるんだ…どうしてか理由は分かるよな?」
「…副社長に…生意気にも指示しちゃった事…ですよね…?
やっぱり副社長怒ってました…?」
「あゝ、随分とな!
だが、あの時は皆んなパニクってたし、うさぎが代々木代を使った事で、早く状況を把握出来たのも事実だ。だが…」
(…にしてもね…平社員が副社長に指示出しちゃうなんて…普通じゃあり得ない。
やっぱり…クビ…かぁ…
まぁ、一度は覚悟したんだし、諦めるしかないのかなぁ…
本当バカな私…
はぁ…このままお兄ちゃんと結婚かぁ…)
「…分かりました。
明日にでも…退職届出します。
ご迷惑をお掛けしました…」と千夏は頭を下げた。
「いや、話は最後まで聞いてからにしろ。
俺と取引きしないか?」
「取引き?」
「取引きに承諾してくれるなら、代々木代には俺の方から取り成してやって良いぞ?」
「本当ですか⁉︎」
一縷の希望を見出した千夏は、木ノ下の腕を掴みすがった。
「あ、でも…
彼奴、あー見えて頑固だからな…一筋縄でゆくかどうか…きっと手こずると思う。
けど、なんとか説得してやるよ。
今、うさぎに辞められても俺が困るしな?」
「でも、どうして私の為に…そこまでして…」
「おまえの事は今まで観て来た。
仕事の覚えは早いし、いつもキッチリしてて、面倒見も良く、気配りも出来る。
何より、人に媚びないところが良い。
俺が社長だと知っても、今まで通り接してくれる。
説教してくるのは、ちょっと余分だがな?」と言って微笑み千夏の頭に手をおいた。
(チーフ…私の事そんなに評価してくれてたんだ…
嬉しい…)
「有難うございます!」
喜ぶ千夏を見て、木ノ下は右口角を上げた。
「じゃ、取引き成立だな?
コーヒーだけど、乾杯するか?」
「はい!」
二人はコーヒーカップを軽く合わせると、既に冷めてしまったコーヒーを、千夏は嬉しいそうに飲み干した。