この男、危険人物につき取扱注意!
(ヤクザと結婚なんて…
ヤだ!偽装でもヤクザの嫁になるなんて…絶対ダメ!
お父さん、お母さんも…絶対悲しむ…
ましてやお兄ちゃん達が黙ってない。
なんとかしてここから逃げなくちゃ!)
「コーヒーだろうが、こうして腹黒蛇組の若頭と取引き成立の杯を交わしたんだ、今更、約束を反故になんざ出来ねぇんだ!
分かったらサインしろってんだっ!」
聞いたことのないドスの効いた木ノ下の声に、さすがの千夏も怯えきっていた。
(えっ⁉︎ どうしよう…
でも、サインしても最悪ハンコさえ押さなきゃ…
まだナントカなる…よね…? なるよねぇー…
誰かそうだと言って!)
千夏は自問自答を繰り返しながら、とうとう木ノ下の迫力に負け、震える手を左手で押さえながらなんとかサインした。
千夏がサインし終わったのを見計らった様に、坂下が新しいコーヒーを運んで来た。
坂下は千夏の前に新しいコーヒーを置くと、側に置いてあった婚姻届に目を移した。
「若、成立ですか?
おめでとうございます。
後はハンを押すだけですね?
こちらが、小野田様の印鑑になります」と言ってスーツのポケットから印鑑ケースを取り出した。
坂下の取り出したモノは、間違いなく千夏のハンコで、いつもデスクの引き出しに入れているモノだった。
「な、なんで私のハンコ待ってるんですか⁉︎」
「必要になる事もあるかと思いまして、部署を出る際お預かりして参りました」
(お預かりって…私、預けてませんけど⁉︎
マジで…これって非常にマズイのでは…ないでしょうか…?)
「坂下、お前、俺達のこの婚姻の証人になってくれるか?」
「はい!
わたくしの印鑑も持って参りました」と坂下は迷う事なくサインをし、ハンをおした。
(なんて…用意が良いの…
もしかして…やられたっていうやつ?
これが…ヤクザのやり方⁉︎)