この男、危険人物につき取扱注意!
コーヒー豆コピルアクについて、坂下が説明しようとしたところ、逃げるようにして木ノ下は部屋を出て行ってしまった。
一人置いてかれた千夏は、どうしたものかと思ったが、自分まで坂下の話を聞かないのは、流石にまずいと思い、不安ながらも姿勢を正し坂下に向き合った。
「まったく…」
坂下は深い溜息をついてから、千夏へ説明し始めた。
「ジャコウネコは、赤く熟したコーヒー豆を食べるのですが、外皮だけが消化され固い生豆の部分だけが腸内に残ってしまいます。
そのまま残った豆は発酵し、それがフンとして排出されるのです」
「やっぱり、ウンコじゃアッ…」
しまったと思った千夏は、慌てて口に手を当てるが、時既に遅かった様で、千夏の下品な言葉に坂下から向けられる眼差しは更に険しいモノになっていた。
そして、千夏は恐怖を感じ身を縮めた。
(ウッ…そんな目で見ないで下さいよ…
私…秦さんも苦手だけど、坂下も苦手だなぁ…
だって、この人殺気が凄いんだもん…)
坂下への恐怖に身を縮める千夏の事など気にする様子もなく、坂下は話を続けた。
「ですが、ジャコウネコの消化液が豆に染み込む事によって、豆に含まれる物質が化学変化を起こし、豆が美味しくなるのです」
「美味しくなるって言われても…排泄物である事は間違いない訳で…」
坂下の説明にも、千夏は未だ糞だとの疑いは変えずにいた。そんな千夏の気持ちを察してか、更に坂下は説明を続けた。
「しかし、豆はパーチメントと呼ばれる殻に包まれているので直接排泄物に触れているわけではありません」
「え、そうなんですか?」
「パーチメントの部分をきれいに取り去り、完全な洗浄を行いますので、全く問題はありません。
ジャコウネコのフンと生豆は決して触れていないのです」
(へー…)
「そうなんですね?
知りませんでした…」
「うちが契約した農場も、生産工程はきちんと管理されておりますし、インドネシアの検疫をパスし日本の検疫もパスしています。
ですから安心して、好きなだけ飲んで下さい」
「ちょっと安心しました…」
(ん?)
「あの…今、“契約した農場も” って言いました?」
「はい。
若から、小野田様の為に “ 一番高いコーヒーを” と言われましたので、私が契約に行ってまいりました」
「えっ?インドネシアまで…ですか⁉︎」
「はい!」
「嘘っ…」