この男、危険人物につき取扱注意!
「ところで…なんで坂下さんは、お店を開けないんですか?
凄い人気店なのに?」

「本業がありますから」

(また…本業か…?)

「坂下さんの本業ってなんですか?」

「秦と同じ(てっぱん)です」

同じ言葉なのに、秦の時とは違って、坂下の(てっぱん)の言葉は何故か重く感じた千夏は、仕事内容が気になり坂下に聞いてみる事にした。

「鉄板…って、鉄鋼関係の仕事です…よね?」

「いいえ、違います。若の盾になる事です」

「盾…?」

「若の命を守る為の盾です。
私と秦は、若の護衛をしてます」

「SPって事ですか?」

「まぁ簡単に言えば…そうですかね?」

(護衛つけるほど、ヤクザの若頭って危険なの?)

「私はズタボロになって、路端に倒れてたところを組長(おやじ)に拾って貰いました。
何日も高熱を出し死にかけていた私を、若が寝ずに看病してくれて、やっと食事もとれる様になった頃、そばにあった果物ナイフを首に当て命を絶とうとしたんです」

(え?)「…どうしてそんな事…」

「夢だったモノが無くなり、借金だけが残され…
そんな生活が嫌になったからです。
でも、出来なかった…」

坂下は部屋の外へ目を向け、懐かしそうに微笑んだ。

「若が、私を助けて(とめて)くれたんです」

「チーフが?」

「はい。学校へ行った筈の若は、りんごと一緒に置いていた果物ナイフの事が気になったらしく、息を切らせながら戻って来てくれたんです。
そして、“死ぬくらいなら、お前の命俺にくれ!” って…15のガキが大人の私に言ったんですよ?
可笑しくて、腹を抱えて笑いました」

(え?)

「それ以来、若の護衛として側にいます」

「じゃ、(てっぱん)と言うのは…」

「刃物だけじゃなく鉄の玉からも、若を必ず守るって事で、秦が “てっぱん” と言い始めたんです」

「じゃ、もしかして秦さんも…」

「ええ」

(そうだったんだ…)

「あの…その鉄の玉と言うのは…所謂ピストルって事ですよね?」

「はい。
今は色々と厳しいので、扱ってる組も無いと思いますが、いざとなれば国外からだって、簡単に手に入れる事は出来ますからね」

「そんな簡単に⁉︎
でも、今は安全なんですよね?」

「それはなんとも…
島同士の小競り合いはいつも有りますし、それを大きくしたいと傍から横槍を入れてくる(もの)もいます。腹黒蛇組(うち)は、若が東の総長である龍神組の若頭と仲が宜しいので、腹黒蛇組(うち)に喧嘩をふっかけてくる(やつら)は居ませんが、用心に越した事はありませんから?」

「そうなんですか…」

「すいません。こんな話して怖くなりましたか?」

「…いいえ。初めに聞けて良かったです」

「怖くなって逃げ出したくなったり…」

「いいえ。もう腹は括ってますから!」

(そう!
どんな形であろうと、サインしてハンコを押したのは私!
ここはもう腹括るしかないでしょ!)







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