この男、危険人物につき取扱注意!
坂下が部屋を出て行って、暫くすると木ノ下が部屋へ戻って来た。
「ひとりにして悪かったな?」
「もう!チーフ何処行ってたんですか?
坂下さんの話面白かったですよ?」
「そのチーフって呼ぶの、やめてくれるか?」
「え?」
「この家の中では辞めてくれ?
この結婚が偽装結婚だと、親父にバレるかもしれんからな?」
(そっか…名前で呼んだ方が良いのか…)
「あ、そうですよね?
じゃ、春樹さんで良いですか?」
「えっ!あ、ああ…それで良い…」
名前を呼ぶ事に何の躊躇いも見せない千夏に、自分の要望だと言うのに春樹は、恥ずかしと嬉しいさで“ヤバッ”と思わず発した口を慌てて手で押さえていた。
次第に春樹の顔は見る見る赤くなり、それを見た千夏は可笑しくなって笑いだしたのだ。
「プップッアハハハ…チーフ、じゃなかった春樹さん、そんなに真っ赤になって可愛い…
けど、そんなに照れられると、こっちまで恥ずかしくなるじゃ無いですか?」
(こんなチーフ初めて。これは貴重だわ!ウフフ)
「俺が照れる?そんな事しない!」
(しないって…耳まで真っ赤にして言われてもね…照れてるとしか見えませんけど?
あっ、婚姻無効の事ウソつかれたから、少し虐めてあげよっと!)
「だってぇ〜春樹さんの顔赤いですよ?」
「これは… 向こうで俺達の婚姻を祝って、酒盛りが始まってたから…少し呑んでたからだ」と、いつもの様に眉間にシワを寄せ話したが、赤面だけは隠せなかった。
「そのしかめっ面でですか?」と千夏は春樹の眉間を指で触った。
「やめろ…」
「春樹さん!はるきさん?はーるきさん!は、る、きさん!」
「止めろ!」
「は〜るき!」
何度も春樹の名前を呼びながら、袖を引っ張ったり、頬を突っついたり、微笑みながら眉間に手を伸ばす千夏だった。