この男、危険人物につき取扱注意!

「止めろって言ってるのが分からないのか⁉︎」

大きな声を出し千夏の手を払おうとした春樹だが、気がつけば千夏を押し倒していた。

(え?)

大きな声を出した春樹に驚くのと同時に、初めて男性に覆い被さられた事に驚き、一瞬かたまりはしたが我にかえった千夏は、悪ふざけが過ぎたと思い小さな声で “ごめんなさい” と謝った。だが、春樹は何も言わず退こうともしない。

「…チーフ?」

何もしないと言った春樹の言葉を信用しているとはいえ、男性経験の無い千夏は不安を感じていた。
そして、春樹の体を退け様と何度も叩き押してみるが、退いてはくれなかった。

(お願い…退いて!)

次第に春樹の体は重なり、今まで感じなかった春樹の吐息が千夏の耳元に掛かり始めた。

(え?)

千夏が肩を窄めると、春樹の小さな声で「千夏…ごめん」と聞こえた。

(え…?)

いつも “うさぎ” と呼んでいる春樹に、初めて “千夏” と呼ばれ、春樹を退けようとしていた千夏の手の力が一瞬緩んだ。

「…千夏」

「…チーフ?」

そして、再び聞こえた千夏と呼ぶ春樹の声。
だが、その後直ぐに寝息に変わっていた。

(え…嘘でしょ?)

眠ってしまった春樹を再び押し退け様とするが、細い小さな体に、寝てしまった大の男を動かす事など出来る訳もなく、多分聴いているであろう坂下に向かって千夏は話しかけた。

「坂下さん、聴いてますよね?
お願いですから助けに来て下さい!
じゃないと、盗聴してる事チーフにバラしますよ?」


千夏の呼びかけに姿を現した坂下は、深い溜息を吐き春樹を千夏から剥ぎ取り、スーツを脱がせるとそのまま布団に寝かせた。





< 97 / 190 >

この作品をシェア

pagetop