【短編】澱(おり)
私のことが好き?

圭吾の言葉に、ひどく混乱する私。



「何言ってるの? 好きだったのは、昔の話でしょ?」

「昔とか今とか、そんなん俺だってもうわかんねぇよ!」


今度は圭吾が大きな声を出す。

圭吾は、それから一呼吸置き、真っ直ぐに私を見た。



「なぁ、俺ら、ちゃんと始め直さないか?」

「……え?」

「色んな順番がめちゃくちゃだけど、そんなのもう全部なくして、俺は沙奈のこと好きだから付き合いたいと思ってるよ」


付き合う?

私と、圭吾が?



「バカ言わないでよ。私たちの過去が、そんな簡単になくなるわけがないじゃない。おばさんとお父さんのことだってあるのに、私たちが付き合うなんて」

「だったら俺らは一生、苦しんでなきゃいけないのか?」


え?

顔を上げたら圭吾と目が合った。



「付き合って、どうしてもダメだったなら仕方ないよ。それはその時に考えればいい。でも、もしかしたら、俺らはふたりでなら、乗り越えられるかもしれないだろ」


ふたりでなら、乗り越えられるかもしれない。



「憎み続けるよりも、あいつらより幸せになって見返してやろうって思う方が、ずっとよくないか?」


父と圭吾の母より幸せになって、見返す?

そんなこと、考えたこともなかった。
< 42 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop