しあわせ食堂の異世界ご飯6
 双剣の一本を手に持ち、ローレンツはライナスの首筋へあてがう。罪を認め裁かれるつもりがないなら、命はないと暗に言っている。
 ライナスは、頭の中でなぜこうなったのかということを必死に考えていた。そして同時に、自分に絶対に皇帝になれと言った母親の言葉が蘇る。
「その書類は、屋敷で厳重に保管していたはずだ。いくら優秀な部下がいたとしても、手に入れることは不可能なはずだ……」
 いったいどうやったのだと、剣の刃に怯むことなく、ライナスはリベルトを睨みつける。
「…………」
 けれど、リベルトは口を開こうとはしない。
「なぜ、なにも言わない! 私に語る言葉など、もうないと言うのか?」
 ここまで証拠があっては、裁判でも逃れることはできないだろう。それぐらい、優秀な頭脳を持つライナスであればわかる。
 自分を支持する人間がどれぐらいいるかにもよるが、死罪――よくて爵位剥奪後に一生牢屋生活だろうか。
「リベルト陛下!」
 ライナスがもう一度口を開いたのと同時に、部屋の扉が開いた。

「その書類は、わたしがリベルト陛下にお渡ししました」

 新しく入ってきた人間が、静かに、震える声で、そう告げた。
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