しあわせ食堂の異世界ご飯6
 最初から最後まで抑揚のないその声は、きっと感情を抑えているがゆえだろう。
 貴族としての自分と、ライナスの娘としての自分。そのふたつがせめぎ合っているはずだ。
 まだ幼いリズベットが下すには、重すぎる決断だった。
 リベルトが執務机から離れ、リズの下へ行く。
「よく頑張ったな、リズ」
「……はい、はいっ!」
 リズの視線に合わせるようにリベルトがしゃがむと、リズベットが涙をこらえたまま抱き着いてきた。
「泣いても、いいんだぞ?」
「……泣きません」
「そうか。リズは強いな」
 ふたりを見たライナスは、いつの間に娘がこれほど自分でものを考えるようになったのだろうと感じた。甘えたがりな娘だとばかり思っていたのに、自分の悪の部分を、娘は許せなかった。
 大好きな娘に顔向けできないなんて、親失格だなと思う。そして自分が、もう追い詰められて断罪されるしかないことも自覚する。
 このままでは、自分の罪にリズも巻き込んでしまう。
 本来貴族が罪を犯せば、その家も同じように罰せられる。爵位を剥奪されれば一家で路頭に迷うし、今更平民として生きていくなど無理だ。

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