しあわせ食堂の異世界ご飯6
 ライナスはあの短い間にそれを考え――いや、もしかしたら、いつかこの二択を迫られることを考え、自分の奥歯に毒を仕込んでいたのかもしれない。
 すべての罪をかぶって命を断とう。
 そうすれば、リズに自分の罪が及ぶこともないだろう。それぐらいなら、信頼する部下が上手くとりなしてくれると。
 きっとそんな答えが、ライナスの中であらかじめ用意されていたのだろう。
「確かにリズにとっては酷だ。しかし、爵位を剥奪され、平民に落ちそのままのたれ死ぬであろう未来を娘に残すのは嫌だったんだろう」
 ライナスの罪を許すことはできないが、せめて娘を助けたいというその気持ちを汲んでやろうとリベルトは考えたのだ。
「優しい判断ですね、冷酷無比の皇帝陛下」
「その噂はもう不要だ」
 皇位を狙うライナスが消える今、リベルトの障害になる者はいない。あとは貴族をまとめ上げ、自分が絶対的な皇帝としてジェーロを治めていけばいい。
 そのための布石は、もうすでに数年前から打っていた。
 しばらく沈黙が流れるも、このままではよくないとリベルトが口を開こうとし――

「それは駄目よ!!」

 バァン!と。
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