婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 ラスカル大臣は大急ぎで馬車を降りると、露店へと駆け寄る。

 汚れた衣服を身に纏った白髭の老人が、「いらっしゃい」とラスカル大臣に笑いかけた。

 その隣には、同じく汚れた身なりをした赤毛の少年がちょこんと座っている。

 男の前に敷かれた敷物には、小分けに束ねられた謎の茎が大量に並んでいた。黄みがかった白色をしていて、ひょろひょろとやたらと細長く、頭に豆のようなものがついている。

「ここは、何を売っている店だ?」

「へえ、もやしですだ。今、わしらの村で流行っている新しい野菜でしてね、シャキシャキしててこれが案外美味しいんですよ」

 もやしなどという野菜は初めて耳にした。だが、ラスカル大臣の心を虜にしたのはもやしではなく、敷物の片隅に転がっている"あるもの"だった。

「――これはなんだ?」

 ラスカル大臣は、震える手でそれを指し示した。

「へえ、カースイですだ」

「それは分かっておる。その模様は何だと聞いているのだ」

 真っ赤なカースイの皮には、細かな彫刻で花模様が刻まれていた。ひとつひとつが繊細で、見ているだけでため息が出るような美しさだ。
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