婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 アンジェリ―ナは、顔をしかめた。

「美丈夫だから、何だというの? 私は彼とほとんど話をしたことがないし、好きになる理由がない。そもそも、王宮で見かけただけで私を好きになったという彼の方がおかしいのよ」

 ビクターがアンジェリ―ナに懸想している理由は知っている。

 そういうキャラ設定だからだ。

 ビクターのアンジェリ―ナへの想いは、いわば製作者サイドに作られたもの。プログラムを仕組まれたAIと同等だ。

(考えてみれば、気の毒な話よね)

 制作者サイドの気まぐれで作られた後付けキャラクター。ヒロインである純粋無垢なエリーゼならともかく、悪役令嬢のアンジェリ―ナに恋してしまう役回りだなんて。

(きっと、時が経てば彼も目を覚ますはず。ゲームの中と言えども、これもひとつの人生よ。ビクター様にも、幽閉される気の毒な悪役令嬢から一転してネクラ人生を満喫している私と同じように、自分で決めた人生を謳歌して欲しいわ)

 アンジェリ―ナは、心からそう思ったのだった。
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