婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 嬉しそうに果物を受け取る子供たちは、やはりアンジェリ―ナの施した芸術には興味がないようだ。果物には、果物としての価値しか求めていない。

 だが、すでにフルーツカービングに飽きてしまったアンジェリ―ナにしてみれば、どうでもいいことだった。

「こういうの、いいですね。アンジェリ―ナ様の聖女ポイント、絶対上がってますよ」

 果物配布の手伝いをしているララは、子供たちの笑顔にまんざらでもないようだ。

「いずれ陛下のお耳に入れば、もしかしたらアンジェリ―ナ様は幽閉を解かれるかも――」

「だから、私はここが気に入っているの。たとえ出て行けと言われても出て行く気はさらさらないわ」

「……はあ、そうですよね。納得はいっていませんが、アンジェリ―ナ様のお気持ちは、もう充分分かってますって」

 果物の箱は、あっという間に空になってしまった。ちょうど子供たちの列も途切れたところで、ぴったりだ。

 ……と思いきや、まだひとり残っていた。赤毛の少年が、無表情でアンジェリ―ナに手を差し出している。

「バーベキュー師匠?」

 バーベキュー師匠、ことトーマスの弟であるダニーだ。
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