婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 アッサラーン王宮内では、今宵も夜会が開かれていた。ホールには豪華な食事が並び、着飾った男女が談笑している。
 
 ホールの真ん中では、次から次へと余興が繰り広げられており、今は奇術師が鳥を使った奇術を披露しているところだった。

 ここアッサラーンの王子であるスチュアートは、金仕立ての悪趣味な椅子に座り、愉快げに余興を眺めていた。その隣には、薄茶色の髪をした見馴れない令嬢がいる。

 令嬢――否、エリーゼと紹介された彼女が貴族ではなく平民であることを、ラスカル大臣は知っていた。スチュアート王子が、自ら打ち明けたからだ。そのときのやり取りを、ラスカル大臣ははっきりと覚えている。


『大臣、こちらはエリーゼだ。エリーゼは美しいだろう?』

『ええ、まあ。そうですね』

 建前上そう答えたものの、ラスカル大臣は、内心王子の隣にいる女に不快感を覚えていた。
身のこなしが、まるでなっていない。椅子の座り方から扇子の仰ぎ方まで、淑女の基礎すら身に付いていないのだ。
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