婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 それに、高級そうな薄紅色のドレスで着飾ってはいるが、ちぐはぐな感じがした。顔は可愛らしいかもしれないが、あふれ出る気品というものが、彼女からはまるで感じられない。

『ラスカル大臣。私は彼女を愛している。真実の愛に、身分は関係ない。そう思うだろう?』

 そう真摯な眼差しで説かれた瞬間、この王子は何も分かっていない、とラスカル大臣は感じた。王宮に、それも自らの傍らに平民の娘を置くなど、言語道断。長い王室の厳粛なる掟を破ったことになる。

 そのうえ――

『スチュアート殿下、つかぬことをおうかがいしますが……』

『なんだ?』

『ご婚約者のアンジェリ―ナ様は、どうされたのですか? 見当たらないようですが』

 スチュアート王子のかねてからの婚約者、アンジェリ―ナの評判は、ポルトス国内にまで響いていた。

 凛とした美しさ、聡明な眼差し。名だたるランバート公爵家の令嬢なだけあり、にじみ出る気品は匂い立つようだともっぱらの噂だ。そのうえ賢く、向こう見ずなところがあるスチュアートを、陰で上手くサポートしているとも耳にしたことがある。

 だが、スチュアートは露骨に眉間に皺を寄せた。
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