ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


今にも意識が飛んでしまいそうな状況でも聞こえてきた、不思議そうに私の様子を窺う愛しい彼の声。

どうやら、彼の出勤日の朝の日課である朝シャワーが終わり、浴室からリビングに戻って来たらしく、リビングのドア付近からその声は聞こえてきていた。


パタパタッ

大きな音をたてて近づいてきたスリッパと床が擦れる音。


「伶菜!!!!! オイ、大丈夫か?どうした?」

珍しく慌てた様子の彼の声が明らかに私に近づいてくる。


『なーんか、失、敗・・・?アハハッ』


朦朧としながらもとりあえず返事をした私。
なにがなんだかわからなくなっていたから苦笑いまで浮かべてしまう。


「とりあえず止血処置するぞ。締め付けるから結構痛いけどガマンしろな。」

『イタッ!!!!』


家の中では聞きなれない彼の引き締まった声。
左腕をタオルらしいモノでかなり強く締め付けられた私。

意識が朦朧としていても、腕を締め付けられる痛みはしっかりと感じていた。


「かなり傷、深そうだな。ここじゃ、縫合できないし・・・」


患部を見つめる彼の鋭い視線も、久しぶりに見かけるような気がする
私が駅で彼に助け出された時、救急車の中で診察してくれたあの時もこんな感じだったな

そんなコトを思い出したら

なんか傷口で、ドクドクと脈を打つような感覚が、もっと強くなっちゃった感じ

でも、安心
彼が傍にいてくれるから



「これか。ファックス台の上においてあった花瓶が割れてる。」

『・・・花瓶?!』

「そう。お前、なにかの拍子でコレ落として、そこに手を突っ込んじゃったんだな・・・タオルもう1本いるな。あっ、あった。」


彼は私が怪我した原因を冷静に分析しながら、今度は私の左手を持ち上げて手際よくタオルを左手全体に巻きつけてくれた。

私、祐希を抱えたまま勢い余って後ろに反り返った際にベランダ入り口に隣接しているファックス台に倒れ込んで、花瓶落としちゃったんだ

祐希が怪我しなくてよかったけれど
やっぱり、痛いです




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