ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「日詠先生?」

『・・あっ、そうおっしゃって頂けて光栄です。』

「これからも宜しくお願い致します。」

『こちらこそ。』


その言葉のせいで俺は
自分に信頼を寄せて下さっている目の前の患者さんに気の利いた言葉をかけてあげられなかった。

いや、その言葉のせいだけではないだろう

『あの後、伶菜、どうなっただろうか?』

怪我をした伶菜のことが気になっていたせいもあるだろう



でも、業務従事中の今、伶菜のところへ行くことはできない
だとしたら、電子カルテ上で状況を確認するしかない

『氏名検索でカルテを拾えるはずだ。』

俺は目の前の患者さんである酒井さんに会釈した後、すぐに病室を後にして、パソコンがあるナースステーションへ駆け寄った。



『パソコン、貸してください!!!!』

「ナオフ・・・日詠先生?そんなに急いでどうしたんですか?」


夜勤帯と日勤帯の看護師達が忙しそうに申し送りをしていることもあって、パソコンはどこも利用中。
いち早く伶菜の治療状況を知りたい俺。
俺の異変を見落とすわけがない福本さんが近付いて来た。



『急ぎで電カルで確認したいことがあります。』

「わかった。私の管理用パソコン使っていいわよ。」

『ありがとうございます。お借りします。』


いつものようにくだらないやり取りをする余裕なんて1%もない俺は、福本さんの動向を気にすることなく、電子カルテにログインする。


『あれ?検索できない。』


氏名検索で”日詠伶菜”と入力しても該当者なしとの表示。
もう1回同じ入力をしてしまう余裕のないままの俺。


「まだ、氏名変更してないからでしょ?」

『あっ、そうか。』


珍しくまともな助言をしてくる福本さんの言葉を素直に聞き入れる珍しい俺は、すぐさま高梨伶菜と入力して、無事で伶菜の電子カルテを開くことができた。



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