ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「10時20分ならいいよね?・・・よしわかった、交渉成立ってコトで・・・待ってるから宜しくねッ!じゃ、また後で。」
ピ!
「あーー手配終わった。終わった。じゃ、伊藤先生、今日一日宜しくお願いします!さ、やるぞ!」
「わかりました。森村先生、ごゆっくり♪」
本人いわく交渉成立したせいかなんだかの気合い入りまくりの森村医師だったが
ホンワカ、萌え系の声で返事をした伊藤先生にペースを乱された様子で
「ゆ、ゆ、ゆっくりとはしてられません・・・それじゃ、よろしく・・」
まさか・・・どもっていた。
そして、祐希を抱っこした伊藤先生は診察室から出て行き、再び二人きりとなった医師と患者。
「さ、そろそろ手術室に向かおうか。途中まで案内するよ。」
『途中まで案内するって・・・キャスターがついているベッドとかで手術室まで運んでくれないんですか?』
「はっ?」
手術=大事(おおごと)のイメージが強い私が口にした一言を耳にした森村医師は
眉間にクッキリとした皺を刻みながら、オーバーリアクション気味に大きな口を開けてみせた。
『だって、TVドラマとかでもよくやってるじゃないですか!ベッドで手術室に運ばれている患者に看護師さんが“手術すぐに終わりますから大丈夫ですよ。”とか声をかけているところ。普通、手術室ってベッドに横になって運ばれるんですよね?』
それが当たり前という思い込みから、森村医師のリアクションが間違ってると思ってしまっている私は口を尖らせながらそう尋ねた。
「冗談!歩いていくんだよ!足は怪我してないだろ?」
『あっ、確かに手の怪我だから・・・手術室の入り口ぐらいまでなら歩けるかも。』
あんなにも怒れる相手からズバッと指摘された事実を素直に受け入れた私。
「手術室の入り口までなんかじゃなくて、自分の足で、手術台に登るんだよッ!ほら、行くぞ!」