ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「ですよね?日詠さん。彼女もこうおっしゃってますし、僕が彼女の主治医を引き受けますから、日詠さんは早く産科病棟へ向かってあげて下さいね♪」
組み合わせた両手指を後頭部に押し当てたまま、軽い口調でナオフミさんにいち早く病棟へ向かうように促した森村医師。
「・・・・・」
フウーッ
そんな森村医師の目の前で小さく溜息をついたナオフミさんは私のほうを向いて小さく微笑んでくれた。
そして、再び森村医師のほうを向きおもむろに口を開いた。
「彼女を・・よろしくお願いします。」
私がいつも耳にしている低くて穏やかで、そして心地いい彼の声ではなく事務的な語り口調で森村医師に軽く頭を下げた彼は、私のほうを再び向き、軽く頷いた後私達に背を向けて病室から出て行ってしまった。
彼の大きな背中を見た私はやっぱり泣きそうになってしまった。
なんとなく、彼が私の前に現れなくなるような気がして。
ナオフミさんがもう自分の傍に居られなくなりそうで。
でも、泣くのはグッと堪えた。
今、ここで泣いてしまったら
ここにはナオフミさんはいないけれど
きっと彼に自分の想いが伝わってしまう
そんな気がしたから
「日詠さんもあんな程度ってことか・・・大したことねーな。」
今にも零れ落ちそうな涙を堪えている私の真ん前で
相変わらず後頭部の後ろで両指を組んだまま悪態をついてみせた森村医師。
大したことない?
なによそれ
私とナオフミさんのコト、なんにも知らないクセに
なのに
大したことないなんて
『・・・なんにも知らないクセに!!!』
「ああ、そうかもな・・・でもなんで言わないんだ?・・・傍に居て欲しいって。なんで彼に面と向かってそう言わない?」
えっ?!
私、この人の前で“傍に居て欲しい”って口にした?
ううん、口にしてない
なのに、なぜ
私の気持ちがわかるの?
私が自分の胸の中にだけ押し込めたその感情が
わかってしまうの?
ううん、それはきっと偶然だよ
森村医師は
ただ、なんとなく
そう言ってみただけだよね?
「俺には、自分の思ったコト、ぶちまけてるだろ?」
『・・・・・・・・・』
私は、この人に
自分の思ったコトぶちまけてる?
“放っておいて下さい”
“放してよ!お医者さんなら、誰だって切れているモノを、縫うことができるんでしょ?だから、アナタじゃなくてもいいんだから!放して!!!”
“そういう無神経なトコロ、ホント許せない!”
“わかりやすいって、どういうコトよ!”
”なんにもしらないクセに!!”
ニヤリと相変わらずな笑みを浮かべ腕組みをしていた森村医師にそう問いかけられた瞬間
私の頭に中には自分が彼に放っていた数々の言葉がよぎっていた。