ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「ママー!!!!!ブー!!!!!」


そして私は昨夕と同じ呼びかけの声で目を覚ました。
電動ショベルカーのおもちゃで遊びたいという祐希の声。


『ハイハイ・・・今、電源入れてあげるからね!』


そう言いながら昨夕と同じように点滴チューブと針の存在に注意を払いながらベッドから起き上がった瞬間、私は昨晩右手に握ったまま眠りについたはずの小さなハーモニカのキーホルダーと婚姻届が手元にないことに気がついた。


『無い、ない・・・あれっ?ない・・・よう!!!』




急いでベッド上を見回したが探し物はそこにはなく、ベッドの下にも落ちてはいなかった。

慌てた私は点滴のチューブに引っ張られながらもベッドから立ち上がり、見回す範囲を広げてみた。



『あった・・・こんなところに。・・・よかったぁ~』



照頭台の上に並べて置かれていた小さなハーモニカと婚姻届を目にした私は大きな溜息をつきながらそう呟いた。

そして、それらの横には一枚の黄色い付箋が貼り付けられていた。




伶菜へ

おはよう。よく眠ってたみたいなので、起こすのやめた。また時間ができたら様子見に来るから。リハビリ頑張れな!  

AM4:15 nao 




『来てくれたんだ。きっと、ナオフミさんがハーモニカを拾ってここに置いておいてくれたんだね♪』



昨日寂しい想いに駆られたまま眠りについた私は嬉しさのあまり、ついつい祐希に自分の推測を話しかけてしまっていた。



「ママー、ママー、ブー、、ブー!!!!!」



でもまだ幼い祐希にはその推測は伝わっていなかったようで・・・・



『わかった。わかった。電源ね!』


私は急いで電動ショベルカーの電源を入れ、今朝も早くから祐希と一緒に遊び、運ばれてきた朝食も一緒に食べた。

そして昨日と同様に祐希を保育士の伊藤先生に預けた私は点滴がぶら下げられている点滴台を転がしながらリハビリの部屋に歩いて向かった。





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