ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「森村先生。」
「ハイハイ、わかりましたよ。あと1分!」
話が弾みかけていた彼らに割って入って再び森村医師の名を呼んだ松浦先生に対し、明らかに面倒臭そうな顔でそう吐き捨てた森村医師。
それでも、リハビリルームから出て行こうとはしないで、まだ誰かを探しているようだった。
「おっ、石橋さん、車椅子への乗り移り、だいぶ安定してきましたね!腰に負担がかかりやすい動きなんで、練習しすぎには気をつけていきましょう♪」
「ハイ!先生も忙しそうだけど体大事にしてくれな。」
「ありがとうございます!それじゃ俺はここらで失礼します!」
丁寧な口調で初老の男性にそう告げた森村医師は松浦先生が差し出した携帯電話を受け取りようやくリハビリルームから足早に出て行ってしまった。
たった今まで、目の前で繰り広げられていた森村医師における医師としてそして社会人としての常識の範囲を逸脱していそうないくつかの言動に対して
いつもの私なら自分の頭の中でいちいち細かく批難をしているはずなのに
この時の私はそうする余裕を持たせて貰えないぐらい
・・・彼の言動のひとつひとつに釘付けになってしまっていた。
「彼の意外な素顔、知っちゃったって顔してますよ、高梨さん。」