ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ12:相変わらず不器用な僕ら
【Hiei's eye カルテ12:相変わらず不器用な僕ら 】
伶菜の手術の翌日。
彼女の様子を気にかけながらも、午前中の業務を終えた俺は少し遅めの昼食を摂った後に彼女の様子を見るために病室へ向かった。
しかし、病室のドアのノックをしても返事はなく。
もう1回、ノックしようとした際に、偶然、彼女のベッドのシーツ交換のために訪れた看護助手に、彼女をリハビリルームへ送って行ったばかりであることを教えてもらった。
『さあ、どうするか。』
リハビリの様子を見に行くことも考えた。
しかし、昨日、手術室前でリハビリスタッフである松浦さんに出くわしたこともあって、リハビリ初日というおそらく緊張感が高い日に自分が邪魔をしてはならない
・・・そう思った俺は残り少ない休憩時間でもいいから、手の外科関連の書籍に目を通そうと医局へ戻った。
「日詠くんも食べる?北海道土産。」
『北海道土産・・ですか?』
「そうそう。消化器内科のドクターが北海道の学会に参加したお土産だって。」
医局の休憩室で先輩産科医師の奥野さんから差し出されたレーズンバターサンド。
名古屋駅の百貨店で時々開催されている北海道物産展に出店しているお店と同じもの。
伶菜はわざわざこれを買いに早起きして百貨店に出かけるぐらい好物らしい。
『これ、喜ぶな。きっと。貰っていこう。』
「喜ぶって、伶菜ちゃん?」
『・・・ええ、まあ。』
自分の呟きを聞かれていた恥ずかしさを上手く誤魔化すことができず、奥野さんに肘でこづかれた。
「そういえば、伶菜ちゃん、怪我して緊急手術したらしいじゃない。」
『・・・実はそうなんです。』
「一緒にいなかったの?」
『いましたけど、俺、丁度、彼女が怪我した時にシャワー浴びていて。』
シャワーとか生々しいわ!・・と溜息をつかれながら差し出されたレーズンバターサンド。
『いただきます。』
「ちゃんと伶菜ちゃんに渡しなさいよ。」
『ハイハイ。』
別にその時、伶菜と生々しいことはしていないと反論するほうがもっと色々言われる気がした俺は反論することなく素直にそれを受け取った。