ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「そういえば、美咲、最近、無駄にテンション、高くない?」

『・・・そうですね。山村さんにもマークされているみたいです。』

「日詠くん、美咲になんか言った?甘い言葉とか?」



ギロリと睨まれた。奥野さんに。
学生時代と変わらない視線で。



『福本さんにも似たようなこと聴かれましたけど、身に覚えないです、俺。』

「あんたの身に覚えがないは本当にアテにならないんだって。無意識にもほどがあるって何度思ったことか。」

『・・・自覚ないんですかね、俺。』

「じゃあ、問い詰める時間が無駄だわよね。とりあえず、日詠くんも美咲のこと、気をつけて。」



そう言いながら、奥野さんは休憩室のソファーから立ち上がり、ポケットの中から出したものを俺の手の中に滑り込ませた直後、じゃあねと言って立ち去った。

手の中にはレーズンバターサンド。


『これ、ひとり1個じゃないのか?』


そう呟きながらも、余分に貰ったレーズンバターサンドも伶菜にあげてしまおうと自分の白衣のポケットにそれを忍ばせた。




その後、病棟で処置を終え、少し手が空いたタイミングで、伶菜のリハビリが終わっていることを予想して、再び彼女の病室へ向かった。


病室のドアをノックしてみた。

返事が聞こえたが若干、不機嫌な様子。

何かあったのか?と心配になる。

それに、この機会を逃したら次、いつ訪れることができるか予測できなかった俺は、


『伶菜?・・俺。今、ちょうど手が空いたから来てみたけど、また後で来たほうがいいか?』

若干強引かもしれないと思いながらもドア越しに彼女へ呼びかけた。



「あっ、だ、だ、大丈夫。どうぞ!」


ちょっと慌てているようだったが、いつもの彼女の声。
この声なら大丈夫だと踏んだ俺はドアを開けて彼女の様子を窺った。

それなのに、俺の首元を凝視している彼女。
どうやら聴診器を提げている俺が珍しかったらしい。

いちいちそういう反応されると
なんだかこっちが照れ臭くなる

それをなんとか隠そうとする俺は

『あっ、そうそう、コレ、食べるか?医局の休憩所にたくさん置いてあったから持ってきてみた。』

聴診器を突っ込んだ白衣のポケットに入っていたレーズンバターサンドに依存。





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