ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
・・・はずだった。
『・・・・伶菜?』
一方的に触れているような唇の感触で、何かがおかしいと思った俺は彼女の名前を呼んでみる。
「・・・・・・・」
『伶菜・・・・?』
やっぱり返事がない。
唇を離し、彼女に目をやると、表情が変わらない彼女がそこにいる。
『まさかの・・・寝オチ?』
「・・・・・・・」
『まさかじゃないようだな・・・』
やはり返答はない。
閉じられた瞼
長い睫
それらが動く気配なんて全く感じられない。
『生殺しって言葉、本当にあるんだな・・・・』
眠ってしまったことにガッカリし過ぎた、心の中で呟きべき言葉が漏れてしまう。
男ばかりの理系クラスだった高校生の頃、我こそ先に童貞を捨てようとしている野郎共の一部がぼやいていたその言葉
そいつらが、付き合っていた彼女にギリギリのところで体を重ねる行為を拒否されたとよく口にしていたその言葉
『っとに、どうしてくれるんだよ。カワイイ顔して寝てしまうとかあり得ないだろ?生殺し状態をどうにかする術なんて知らないし。』
当時、受験勉強の合間に、年上の大人の女性と体だけの割り切った関係だった俺には縁がなかった生殺しという単語。
その意味が今になって痛いぐらいにわかるなんて
今の自分が成長したのか
昔の自分がロクでもないヤツだったのか