ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Reina's eye ケース13:私に足りなかったモノ
【Reina's eye ケース13:私に足りなかったモノ】
初めてのリハビリを終え疲れ切っていただけでなく、
せっかく病室を訪れてくれたナオフミさんと気心を許した状態で触れ合うことができなかったせいで、半ばふて寝状態で昼寝をしていた私。
手術して間もない一患者という立場、
そして
多忙を極める産科医師日詠尚史という人物の私生活上での一パートナーという立場だけではなく
祐希の母親という立場にも戻らなくてはならない時間がやってきた。
だから私はベッド上に伏せていた上体をゆっくりと起こし上げ、点滴台につかまりながら立ち上がった。
なんとか自分の力で不安を掻き消し、一歩前へ進むためにも、自分を支えてくれるモノをすぐ近くで感じていたい
そう思った私は照頭台の上に置いてあった小さなハーモニカのキーホルダーと私とナオフミさんの氏名が記入された婚姻届を右手で掴み上着のポケットの中に入れてから祐希がいる小児科病棟へ足を向けた。
『こんにちは、高梨祐希の母親です。祐希をこちらで預かって頂いてありがとうございます!あの、祐希は・・・?』
小児科病棟に到着した私はナースステーションに立ち寄り看護師さんにそう声をかけた。
「祐希のお母さんですね!祐希クン、病棟の一番奥にあるプレイルームで伊藤先生達と一緒に楽しそうに遊んでいますよ。行ってあげてください!」
その看護師さんは右方向を指差しながら軽く会釈してくれた。
私もその看護師さんに向かって会釈した後、彼女が指差した方向に自分の体を向けて歩き始めた。