ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



“小児科病棟の面会時間は午後2時から7時までです。風邪等に罹患されている方ならびに小さなお子様による面会は感染予防のため固くお断りします。小児科病棟”



いきなり私の目に飛び込んできた堅苦しい注意書きを記した看板。



それを通り越すとその先には淡い黄色、水色、ピンク色で彩色された廊下
病室の入り口に掲げられた動物の絵入りの部屋番号
そして上手に手描きされた人気キャラクター達の絵が貼り付けられた病室のドア

小さな子供達にも充分配慮された景色が広がっていた。


更に先に進むと、面会者と一緒に過ごすことができるソファーが置かれたスペースがある。

そこでは毛糸の帽子を深く被り、腕には点滴が繋がれたピンクのギンガムチェックのパジャマを来た小学生ぐらいの色白でか細い女の子と看護師さんが座って話をしていた。




「あのね、わたし、手話を習うことにしたんだ・・・」

「へえ、花凛ちゃん、手話やってみるんだ。どうしてそうしようと思ったの?」


両手で太ももをゆっくりと擦りながら隣に座っている看護師さんにそう伝えた女の子に対してその看護師さんも穏やかな声でそう問いかけていた。

その女の子がなぜ手話を習おうとしているのか気にまった私もついつい足を止めてこっそりと彼女らの様子を窺い始めた。




「わたしね、こうやって何回も入院していて、いろんな人に優しくしてもらってるでしょ?だから、わたしも元気でいるうちに誰かに優しくしてあげたいの・・」


「そっか~。それはいいことだね。」


「わたし、手足や目、耳は元気だから・・・手話ならわたしでも覚えられて、耳の聞こえない人のための役に立てるかなと思って・・・・それなら、大人にならなくても、今頑張ればできるかなって・・わたし、大人になれるまで生きていられるかわからないから・・・」


「・・・そっか。きっと喜んでくれる人いるよ。そうやって頑張っている花凛ちゃんの姿を見て励まされる人もきっといるよね。」


「うん!だから頑張るね!だから、高校生になるぐらいまでは生きていたい・・・そうすればもっともっと誰かの役に立てると思うから。」



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